エクスキューズ・ミー

「言い訳」をテーマに書いています。

「ファミリーレストラン」への言い訳

ファミリーレストラン」という店の呼称に真っ向から背くように、独りで来ている。
しかも四人掛けの席だ。

昼時を過ぎ、喫煙席なこともあってか店は空いている。
作業服姿の老人、世間話を弾ませる中年の女性。窓の外は快晴。何も問題のない、土曜の午後。

「真っ向から背く」って、日本語としてどうなんだろう……。そんな詰まらないことを考える。

日本語が乱れている。物心がついた時から幾度となく耳にしているけれど、しかし乱れていない日本語とは何なのだろうか。
例えば、学生が授業で読む古典の世界。その物語が紡がれた当時は「古典」などという呼ばれ方はしていなかっただろう。その時代ではごく当たり前に読まれていたに違いない。

言葉は生き物だ。生き物のように、時代の流れに乗って変化していく。新たに存在が確認されたものには名前を付けて、伝われば良いんだと言葉を縮めて、乱れていると言われていた言葉が、今の時代の基本的な意思伝達手段として使われるようになっている。

古典の時代には無かったファミリーレストラン
縮めて「ファミレス」と呼ぶのが一般的である。
ファミレス……family-lessの略と言っても通用するかもしれない。
だから、独りで四人掛けの席に座っていることに後ろめたさを感じる必要なんて無いのだ。
ああ、アイスコーヒーがおいしいなぁ。