エクスキューズ・ミー

「言い訳」をテーマに書いています。

「視力」への言い訳

本当にそれが原因なのかは分からないけれど、「ドラえもん」を読んでいたから視力が衰えた、ということにしている。 生まれて初めて読んだ漫画が「ドラえもん」だった。漫画の読み方なんて言うと大袈裟かもしれないけれど、読み方も楽しみ方も教えて貰ったよ…

「正しさ」への言い訳

正しさを武器にしてはいけない。 そんな言葉を聞いたところで、それじゃあ何を武器にして戦おうか? 「戦う」という前提が間違っています、とか? それならば言い換えましょう。何を盾にして守ろうか? 何かを守るために、何を使おうか? 正しさと正しさが衝…

「数字」への言い訳

零から九、と書くと分かりにくい。0~9、その組み合わせで世界は造られている、なんてことを言う人がいる。 楽しくない意見だ、と思いながらも考えてしまう。日常でさえ数字ばかりだと気付いてしまう。 数字が嫌いなわけではない。むしろ、分かりやすく表…

「嘘」への言い訳

誰かが今日も嘘を吐きます。私は今日も嘘を吐きます。 嘘吐きが泥棒のはじまりなら、世界は執行猶予中です。その間にも新しい噓吐きは産声を上げて、言葉を覚えて、誰かの肩を叩きます。「フィクションです、創作です、作り話です、ネタです、例え話です。傷…

「つまらない話」への言い訳

「つまらない話なんだけどさぁ」から始まる話に面白いオチをつけなさい。 「面白い話をするよ」から始まる話に面白いオチをつけなさい。 前者の方が圧倒的に有利だろう……。後者は余程の自信があるのか、愚かなのか。 そして今回は、そのどちらでも無い誰かに…

「何者かになろうとすること」への言い訳

何になりたいですか? 神さま、キリン、流れ星、カーペット、キャベツの千切り。 何にだってなれるんですよ、あなたは。 何にだってなれるはずなんですよ、わたしは。 と言うような感覚が、感情が、演劇や舞台を観る度に湧いてきます。 同時に、スポットライ…

「音楽」への言い訳

「嗜好品なんです」と彼は言った。最低限の衣食住に必要なもの以外は嗜好品だと、濁った瞳をにっこりと細めて。 嗜好品、あるいは贅沢品と呼ばれるものがある。煙草や酒類がメジャーなところではあるのだが、前述の彼に則れば音楽もその中に含まれるだろう。…

「ハッピーエンド」への言い訳

「生きているだけで素晴らしい!」 身体中に管を取り付けられた病人にも同じことが言えるのか? いや、それでも生きていて欲しい、世界に存在していて欲しい、と望む者がいるのならば、その生命には充分な価値があるのかも知れない。 というようなことを考え…

「左耳」への言い訳

耳に穴をあけると痛い。 痛覚のある生き物にとっては当たり前の感覚だ。 痛いのは嫌だ。なぜなら痛いからだ。 誕生月よりはだいぶ前だった。冬なら空気が乾燥しているぶん都合がいいと聞いたからだった。 耳に穴をあけると決めた。 理由はひとつではないし、…

「擬人化」への言い訳

「擬」という漢字を訓読みすると「擬(もど)き」だ。 そうか、擬人化とは「ひともどき化」なのか……。人間以外の生き物から電車、果ては文房具まで、今ではありとあらゆる物が擬人化されている。擬人化されていない可能性のある物がぱっと浮かばないくらいだ。…

「風邪」への言い訳

何かを得るためには何かを差し出さなければいけない。錬金術漫画で知った「等価交換」という決まり事である。 金銭を得る為に時間を差し出して労働する。時給、日給、月給などの場合は、そのまま等価交換という言葉が当てはまると思う。 歩合制、となるとま…

「聴覚」への言い訳

円滑なコミュニケーション! ……エクスクラメーションマークを付けて勢いを……と思ったが、このテンションでは最後まで書き切れない。無理だ。 生来の人見知り、というのもあるが、今回のテーマはもう一つの大きな問題についてである。「え?」 聞き返す。 いや…

「傘」への言い訳

梅雨時のような空模様が続いている。 電車を降りてから職場まで、大した距離ではないが歩かなければならない。 小雨なら傘を差さないこともあるけれど、大抵は折りたたみ傘やビニール傘を差して、視線を落として水溜まりを踏まないように歩く。 誰もが当たり…

「誕生日」への言い訳

誕生日というものに違和感を覚えたのはいつからだろう。 そもそもはカレンダーへの疑問だった。どうして一年は十二ヶ月なのか、一週間は七日なのか……。 調べれば答えは出るのだが、自分の求めているものはそれではなかった。 というか、答え(のようなもの)を…

「道に迷うこと」への言い訳

スマートフォンで地図のアプリを起動する。目的地を入力して歩き出す。 迷う。どういうことだ。 矢印が指している方向へ歩いているはずなのに。「道に迷う」と書くと、前述したようなそのままの意味の他に「生きる上での進路に悩む」ということも表現できる。 人…

「夏」への言い訳

苦手だ、夏が。 思わず倒置法にしてしまうくらいである。 倒置法にしたところで何の解決にもならないけれど、「夏」という言葉を少しでも後ろに追いやりたかったのだ。夏のどこが苦手なのかと言うと……汗をきやすくなるところだ。 空調の利いた部屋で二十四時…

「占い」への言い訳

見えない力を信じるか、と問われたときのことを考える。 超能力、魂、占い……人にとっては胡散臭さの権化のようなこれらの単語を、私は受け容れるのか。「信じた方が楽しいから」。 残念ながら私は、そんなことを言って器用に生きられる人間ではない。 そんな…

「夜更かし」への言い訳

不眠症に悩まされている者が多いと聞く。 斯く言う私も数年前まではその中の一人だった。近頃は、夜になると眠くなってしまう。 悩みの一つだ。贅沢な悩みなのかも知れない。 帰宅して夕餉を終えると、もう瞼が重い。 それでも睡魔に逆らうように、無理をし…

「空を見ること」への言い訳

仕事帰りに駅へ向かうため、陸橋を渡る。 ふと見上げると、自分が空に近づいたように錯覚する。 周囲に樹木や高い建物が無いからそう思うのだろうが、その瞬間が好きだ。空を見上げて何を思うのか。 決して届かないという諦念か、いつか届くという希望か。あ…

「ヒトカラ」への言い訳

ヒトカラ、いわゆる独りカラオケに行ってきた。 もともと独りで行こうとしたわけではなく、一緒に行く相手がいなかっただけなのだが。 物凄く楽しかった。物凄く。誰かを伴ってカラオケに行く場合、多少選曲に気を遣う。 こんな歌を唄ったら笑われやしないだ…

「必要の無い知識を蓄えること」への言い訳

ケラエノ、エレクトラ、タイゲタ、マイア、ステロペ、メロぺ、アルキオネ。 プレアデス星団の七つの星の名前である。 十年以上前に読んだ本に書かれていたのだが、未だに憶えている。 そして、これまでの人生でこの知識が生かされたことは無い。皆無だ。当時…

「誤字脱字」への言い訳

「誤字や脱字の多い文章が嫌いだ。小説どの物語の場会、ストーリーに集中出来なくなってしう」自分で打ちながらイライラしてしまった。 流石にここまでは無いとしても、本によっては酷いものもある。 平仮名が一字抜けている程度ならまだしも、登場人物の名…

若者への言い訳

未来を見つめる瞳の輝き、流行の最先端を担うファッション、ああ、若者にはとても敵わない、といった話ではない。狩られる!と思ってしまうのだ。 何故だろう……。 因みに狩られたことはない。前世か。前世なのか。私はどちらかと言うと大人しいタイプの若者…

コーヒーへの言い訳

透明なグラスに、たっぷりな氷。そこに並々と注ぐ黒色の液体。 温かいものも勿論好きだけれど、この時期はやはりアイスコーヒーが美味しい。コーヒーを初めて飲んだのはいつだろう……と考えて、小学生時代の調理実習の授業に辿り着いた。 ケーキだったかパフ…

「生きること」への言い訳

無機物になりたい。 10年前、そんなことを考えていた。 食事、睡眠、排泄、性欲……そういったもの全てを疎ましく思い、果ては呼吸すら嫌悪していた。独り暮らしの部屋で朝を迎える度に、憂鬱になっていた。 10年前のことだ。そして今。 よく生きているなぁ、…

二十歳を越えても中二病であることへの言い訳

「世界を受け入れし者」というサブタイトルだった。 15年以上も昔に観た深夜アニメの話である。当時は「中二病」などという言葉も無く、「オタク」が世に浸透し始めていた記憶がある。新世紀エヴァンゲリオンが社会現象になっていた時代だ。このアニメは流行…

「記憶を失うレベルの飲酒」への言い訳

「適量は身体に良い」「毎日呑むのは依存の始まりだ」。 相反する意見が並んでいる。 どちらが正しいのか……いや、きっと調べればすぐに分かるだろう。 しかし、調べたところで、調べた人間が生活を改めるのか。 どの時代にも飲酒によって身体を壊す人間は一…

「積ん読」への言い訳

本が好きだ。 漫画や小説に加えて、最近はエッセイにも手を出すようになった。 給料日の直後、余裕のある財布を携えて書店に出掛ける。店内を二周、三周して、気になった何冊かを購入する。 会計を済ませて店を出るときの爽快感は何物にも替え難い。 大切に…

「ファミリーレストラン」への言い訳

「ファミリーレストラン」という店の呼称に真っ向から背くように、独りで来ている。 しかも四人掛けの席だ。昼時を過ぎ、喫煙席なこともあってか店は空いている。 作業服姿の老人、世間話を弾ませる中年の女性。窓の外は快晴。何も問題のない、土曜の午後。…