エクスキューズ・ミー

「言い訳」をテーマに書いています。

「傘」への言い訳

梅雨時のような空模様が続いている。
電車を降りてから職場まで、大した距離ではないが歩かなければならない。
小雨なら傘を差さないこともあるけれど、大抵は折りたたみ傘やビニール傘を差して、視線を落として水溜まりを踏まないように歩く。
誰もが当たり前だと思っている「傘を差す」という行為。
私はこれが苦手なのだ。

傘を差して歩く。
傘を差しているはずなのに、職場に着いて自分の肩を見ると濡れている。
風の無い日の雨でもだ。何故だ。
傘が小さいのか……?いや、ごく普通のサイズのものだし……。
ふと、足元に冷たさを感じる。履いているデニムの裾が濡れている。
どういうことだ、何の呪いだ……!
といった風に、傘を差そうが差すまいが濡れるのである。
濡れるのである、じゃないだろう!
どうしてこんな簡単なことが出来ないのか……。

傘を差すことを始めたのはいつからか、全く記憶に無い。
物心がついた頃には「雨の日は傘を差す」ということが身についていたのだろう。
どんな風に傘を差せば濡れずに済むのか……自分で書きながら悲しくなってきた。
「傘の正しい差し方」の授業が義務教育の中にあったのなら、私だって……。どこかで講義があるのなら行く。あるのか。無いか。

傘の使い方が下手なことについて、どんな言い訳をすれば許されるのだろう。
思いつかないので、傘寿までにはなんとかしたい。
降りしきる中を、今日も濡れて歩こう。