「生きること」への言い訳
無機物になりたい。
10年前、そんなことを考えていた。
食事、睡眠、排泄、性欲……そういったもの全てを疎ましく思い、果ては呼吸すら嫌悪していた。
独り暮らしの部屋で朝を迎える度に、憂鬱になっていた。
10年前のことだ。
そして今。
よく生きているなぁ、としみじみ思う。
よく生きてきたなぁ、とも思う。
色々なものを失って、色々なものを得て、プラスとマイナスのどちらが多いのか……。
まぁ、それについては自分の心で決めてしまっていいのだろう。
「大切なものは心で決めなさい」
好きな少年漫画の名言だ。
あぁ、生きてきたから漫画の続きが読めたんだなぁ。
10年前で終わりにしていたら、あの漫画の最終回を読むことは適わなかった。
好きな漫画の続きが読みたいから。
生きる理由なんて、それくらいでいいのかも知れない。